極端な話をしているように思われるかもしれませんが、実はこれと同じようなことを日本の私たちも経験しています。
1980年代半ば、日本ではファミリー向けのマンションがよく売れました。
マンションを購入する人の平均的な姿は、4人家族で3ないし4LDK、3000万円弱といった値段で、およそ年収の5倍以内におさまっていました。
4人向けマンションの需要が一段落すると次に刈代の3人家族をターゲットにし、面積を狭くして2LDK。
住宅価格は値上がりしているので平均価格は5000万円に近づきました。
さらに次は、新婚世帯向けの1LDKで値段を下げて売り出し、最後は大学生向けのワンルームです。
毎月のローンを支払うのは地方に住んでいる両親でしたから、つまり、すでに一戸建てを持っている人たちが新たな購買層として開拓され、加わったことになります。
ここまでくると、次は高校生を相手にでもしない限り、需要の開拓はできません。
高校を全国統一学区にでもしない限り、そんなことはできません。
○年代になり、大学生がワンルームマンションにひと通り住むようになった段階で、バブルははじけます。
仮にいくら時間をかせいでも、少子化で大学生の数は徐々に減る傾向にあるので、4年経って学生が卒業して出ていくと、そのあとをすべて埋めることはできなくなります。
空き部屋ができ始めると、価格の上昇はストップ。
そこでバブルゲームは終了です。
実際、ラスベガスやマイアミの住宅価格のピーク時点での年間上昇率を見ると、バブル期の日本の6大都市と同じようなテンポで上がっています。
6大都市の商業地の値段がもっとも上昇したのは○年9月の○%(対前年同月比)でした。
日本は国内の貯蓄のみを使って、いわば小劇場で住宅バブルをやったわけですが、アメリカは世界中から資金を呼び込んで、いわば大劇場で住宅バブルをやったようなものです。
その世界経済への影響の大きさには、雲泥の差があります。
アメリカでの住宅ローンの証券化は、次のような流れで行われます。
消費者は住宅を買う際、多額の資金を必要とするため、多くの場合、金融機関から融資を受けてローンを組みます。
「モーゲージ・バンク」と呼ばれる住宅ローン専用のノンバンクや、商業銀行や貯蓄金融機関と呼ばれる住宅ローン専用の銀行が、その融資元になります。
こうした住宅ローンは、小規模の貸し手(レンダーといいます)から大手の貸し手へと売却されていきます。
レンダーはこの売却によって資金を手にし、次の消費者への融資に回すことができます。
一方、売却された大量の住宅ローンは投資銀行の手によって束ねられ、「住宅ローン担保証券(MBSUモーゲージ・バックト・セキュリティ)」として証券化されます。
投資銀行は住宅ローン担保証券をつくるとき、格付け会社に格付けを依頼し、返済されないケース(債務不履行)の確率などを統計学的な手法によって計算し、それぞれの住宅ローン担保証券の格付けが行われます【図212】。
もともと信用度の低い消費者(サブプライム層)への住宅ローンは、利子が高く設定されていますが、こうしたローンをまとめた住宅ローン担保証券の、しかもリスクの高い部分を取り出したものは、投資する側からみると、まさにハイリスク・ハイリターン。
高利回りを生んでくれる魅力的な商品に映りますが、その半面、貸し倒れのリスクが高く、そのままではなかなか手を出せないのが正直なところでしょう。
そこで、高度な金融工学の手法を使い、サブプライムの住宅ローン担保証券を、格付けの異なる住宅ローン担保証券や住宅ローン以外の証券と合わせるなどして、新たな証券をつくることが行われました。
サブプライムの住宅ローン担保証券に潜んでいたリスクは細切れにされ、住宅価格とは異なる値動きをする別の証券と混ぜ合わされるため、リスクは軽減されます。
この証券は「債務担保証券(CDOUコラテライズド・デット.オブリゲーション)と呼ばれます。
さらに、その新たな証券に格付け会社が格付けを行います。
もとは低いランクにあった証券は、刻んだり練り合わせたりしているうちにリスクが見えなくなり、いつのまにかトリプルA、つまり最上級の格付けを持った証券に姿を変えています。
それを世界の投資機関が争うようにして購入したのです。
投資家の側からすると、先進国全体の金利が低いため、効率のよい投資先を求めて悩んでいるときに、CDOといった証券化商品が現れ、それが投資の切り札になったということです。
つまり、単に国債を買っているだけだと年率3、4%にしかならない。
ところが、格付けのよいCDOを購入すれば(実は格付け自体があやしいものだったのですが)、例えば年率4%ほどの利回りが得られるとなると、その商品に飛びつく人たちが出てきます。
住宅価格が上がり続け、うまくいっているときは、すべての人がハッピーでした。
これまでなかなか住宅資金を借りられなかった低所得層や移民たちもローンが組みやすくなり、憧れのマイホームを持つことができるようになりました。
不動産業者も最初のローンの貸し手である「レンダー」も、住宅ローンを証券化する投資銀行も、CDOを購入した世界の金融機関も、どんどん儲かったのです。
住宅を販売していた不動産業者にしてみると、富裕層向けの住宅ブームが起きて、自らの事業を拡大し、従業員も増やした。
ところが住宅価格の高騰で富裕層の購買意欲に見えてきた。
そこで新たな消費者としてサブプライム層に目をつけたわけです。
その結果、サブプライム層に無理にでも住宅ローンを組ませようとする悪質な仲介業者宅−ゲージ・ブローカー)も、横行するようになりました。
そもそも、サブプライムローンで住宅を購入した人は、年収2万5000ドル程度の低所得者とほぼ重なっています。
しかも、ローンの融資を受けた段階で、すでに借りているカードローンなどの元利払いと住宅の元利払いを合わせると、年収の○%を超える人が大半となります。
アメリカ議会ではいま、この行為を「強奪的融資」と呼んで非難を浴びせています。
ブローカーは「元利払いの返済が所得の5割あっても融資できます」と、借り手に甘い言葉で誘いかけます。
なぜなら、住宅価格の値上がりによって、借り手は住宅を担保にして次の融資(不動産担保融資Uホームエクイティローン)を受け、カードローンの元利払いに充てることができるからです。
より借りやすいサブプラィムローンも用意されました。
なんと、最初の2年は元本の返済が不要。
しかも、金利も安く設定された住宅ローンです。
もちろん、最初の2年がすぎると返済額は跳ね上がりますが、そのころには住宅価格も上がっており、やはりこの場合でも住宅を担保に不動産担保融資を受ければ、埋め合わせが可能になります。
万が一、払えそうになくなった場合は、購入した住宅を転売すればよいのです。
数年間、延滞しないでローンを返していると、個人の格付けが上昇し、金利が高いそれまでのサブプラィムローンではなく、ランクアップした「オルトAローン」などに切り替えることができ、その分、金利は低く抑えられます。
不動産業者にしてみれば、借り手が破産して返済できなくなっても、あまり大きな問題ではありません。
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